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書評『スマートシティの脅威』

 

 

日本科学者会議北海道支部発行の「北海道支部ニュース」(No.429、2022年2月1日)で、北海学園大学名誉教授の小坂直人先生が、拙著「スマートシティの脅威」について書評を書いてくださいました。

 

 

<書評> 加藤やすこ著『スマートシティの脅威』(緑風出版・2021年、188頁)

「スマートシティの脅威」というタイトルから、スマートシティを批判的に考察するという著者の意図が明確である。ところが、世の中ではデジタル技術による便利な社会の象徴としてスマートシティが語られることが一般的である。たとえば、「再エネやコージェネを利用した発電設備と需要家をITによって結合した次世代型のエコ・シティのこと」をスマートシティと呼び、スマートグリッドはその必須技術とされ、従来の送配電網から自律可能な分散型ネットワークのことをさしている。スマートメーターなどを基軸にして電力ネットワークに通信・制御技術が組み込まれることで、系統側からの集権的な一方向管理ではなく、一定の需要地域において発電と需要側の双方向管理が実現される」といった具合である。この説明には、どこにもスマートシティの脅威が存在しない。

 著者は、こうしたITのもつ社会的有用性を否定しているのではない。しかし、この技術のもつ環境的・社会的リスクを軽視して、無批判にこれを受容すべきではなく、人間と社会そして環境に及ぼすマイナス影響についても正しく認識し対応すべきであると警告している。警告は大きく分けて2点である。一つは、今後通信手段に用いられる5G電磁波が「発がん性」を含むリスクを有することから、とりわけ子供や若い世代に対する生殖影響について慎重に検討すべきであり、被曝を極力低減する必要があることを訴えている。5G電磁波に曝され続ける生命体のリスクに目をつぶってはならない。遠隔授業等を推奨するコロナ禍の現状は、ともすると著者の訴えを打ち消しそうになるが、学校教育の場における無線LAN使用に対する具体的かつ詳細な著者のアドバイスはすぐにも実践できる内容であり、傾聴に値する。

 今一つの警告は、個人情報のビッグデータ化と個人情報保護の問題である。われわれの個人情報はこれまでは相対する個々の自治体、銀行、病院、企業等との間で基本的には完結することになっていた。しかし、今後は都市OS(注)に個人情報が集約され、さらに、プラットフォーム事業者との連携が進むことによって、ビッグデータ処理事業者に把握されることになるという問題である。我々は既に、利便性の誘惑に負け、アマゾンやグーグルによって個人情報が集約されることを体験済みであるが、事態は公的機関をも巻き込んで進んでいきそうな気配である。また、ドローンによる物流も、薬等、輸送される品物とそれに付随する情報が事故によって漏洩する危険と隣り合わせとなる。そこまでして輸送する意味があるのかどうかを考える必要があると著者はいう。

 以上の二つの警告を真摯に受け止めたうえで、スマートシティ実現の是非を検討すべきであり、その際、著者が最も留意すべき点として挙げているのが、5G電磁波過敏症に対する政策の確立である。ミリ波を禁止したオランダの例などを紹介しつつ、EU諸国やいくつかの都市では電磁波規制条例を制定し、電磁波の影響から市民の健康を守る行動を起こしているという。電磁波は目に見えないが故に、その被害を引き起こす原因が特定されにくい。だからこそ過敏症に苦しむ人々の声に耳を傾け、人々への影響を想像する力、すなわち「予防原則」が重要と著者は強調する。電磁波過敏症は特定の個人の問題ではなく、同じ社会に暮らす全ての人々にとって、いわば鏡に映った自分の姿である。「過去に繰り返された公害から学び、同じ過ちを繰り返さないよう」にと訴える著者の言葉は重い。難しい技術問題を一般の人にも分かりやすく解説してくれる書であり、一読をお薦めしたい。

(小坂直人)

 

注:「都市OS」は都市オペレーティングシステムのことです。個人情報を含む当該都市のあらゆるデータ(エネルギー、交通、医療、金融、通信、教育等)を集積・分析し、それらを活用することを目指して自治体・企業・研究機関などが連携するプラットフォームのことをさしており、ソフト・ハード環境のいずれに対してもつかわれているようです。


日本子どもを守る会編著「子ども白書2021」(かもがわ出版)

新型コロナウィルスが流行する中で子どもたちが置かれてる状況、GIGAスクール問題など、子どもをとりまく様々な問題を50人を超える著者が執筆しています。特集「コロナ禍から未来へ」では、子どもの学びや暮らしが変化している状況を紹介し、「子どもとメディア」ではオンライン学習やスマホの長時間利用についても取り上げています。


加藤やすこ著「5Gクライシス」(緑風出版)

2020年3月から5G=第5世代移動通信システムが運用され始めた。大容量・超高速通信と多数機同時接続という特徴から、高解像度の映像のスマホから自動運転、セキュリティへの利用への期待が高まっている。しかし、欧米では5Gから発生する強力な電磁波による電磁波過敏症をはじめとする健康への影響が懸念され、反対運動が高まり、導入を停止する国や自治体も出てきている。本書は、5Gのイロハから懸念される健康影響、海外での反対運動と規制の取り組みを詳述、5G導入をこのまま進めていいのかを問う。また5G電磁波の防ぎ方も具体的に解説する。

 

第1章 5Gの仕組みと利用分野

第2章 5Gから発生する電磁波と各国の規制

第3章 懸念されている健康影響とは

第4章 これまでに携帯電話基地局周辺でおきたこと

第5章 動植物にも深刻な影響が

第6章 5万機の通信衛星が地球を覆う

第7章 5G基地局の反対運動と規制条例

第8章 電磁波問題をめぐる海外の規制と取り組み

第9章 5G電磁波を防ぐには

第10章 5G運用開始とイギリスで破壊活動が起きた背景

第11章 このまま5G導入を進めていいのか


加藤やすこ著「新 電磁波・化学物質過敏症対策」

いまや誰もがもっているスマホ・携帯電話、全国に張り巡らされる携帯基地局、住宅やマンションに普及するオール電化、無線LANなどの普及により、私たちの周りには電磁波が飛びかっている。また、接着剤、殺虫剤、除草剤、合成洗剤などの化学物質が生活のあらゆる場面で多用される。それに伴い、電磁波過敏症や化学物質過敏症が急速に増大している。しかし電磁波過敏症、化学物質過敏症はまだまだ認知度が低く、医療面での対策が遅れ、克服に苦しんでいる人が大勢いる。誰もが一定の許容量をこせば、罹る可能性のある過敏症。そんな人たちのために、過敏症に効く代替医療、食事療法、生活上の改善策、住宅対策などをアドバイスする。読者の要望に応え、最新知見をもとに全面的に書き改めた決定版!

目次

1章 電磁波・化学物質過敏症とは何か
2章 健康への影響と対策
3章 過敏症に効く代替医療
4章 化学物質のリスクと対策
5章 電磁波対策
6章 社会的な対策


加藤やすこ著「シックスクール問題と対策」(緑風出版)

学校の無線LANや、衣類用洗剤、柔軟剤の香料などで体調をくずし、電磁波や化学物質過敏症も発症し、学校にいけない子どもが全国にいます。海外でもシックスクール問題に対し、集団訴訟や反対運動がおきています。本書は個別の事例を検証しながら、子どもたちの置かれている状況、保護者が直面している問題を明らかにし、どうすれば、すべての子どもが安全に学校で学べるかを考えます。環境改善はすべての子どもの発症を予防することにもつながります。

目次

第1章 電磁波・化学物質で体調不良が発生
第2章 香料・化学物質のリスクと規制
第3章 学校無線LANと電磁波の影響
第4章 学校へ行けない子どもたち
第5章 過敏症の子どものアンケート調査
第6章 安全な環境と社会をつくるには
第7章 子どもたちを守るためにできること


シェリー・タークル「一緒にいてもスマホ」(青土社)

急激に広まったスマートフォンは、いつどこででも連絡を取り合える日常を作り出した。その反面、親子、友人、恋人同士の関係性にも大きな変化をもたらしつつある。家庭、学校、職場でいま起きている問題を豊富なインタビューをもとに分析し、便利さと引き換えに失ったもの、またそれを取り戻す方法をTEDでも話題のシェリー・タークルが提言する。

目次

1 会話の効用
2 ひとつ目の椅子
3 二つ目の椅子
4 三つ目の椅子
5 この先の進路
6 四つ目の椅子?

 

タークル,シェリー
1948年ニューヨーク生まれ。ハーバード大学卒。臨床心理学者で、マサチューセッツ工科大学(MIT)科学技術社会論の教授


植田武智、加藤やすこ著「本当に怖い電磁波の話 身を守るにはどうする?」(金曜日)

電磁波の恐怖はケータイやスマホだけではない。IH調理器、スカイツリー、盗難防止ゲート、携帯基地局…身の回りのどこにでもあるのだ。

目次

第1章 電磁波は本当に危険なのか?―今起きていること、わかったこと
第2章 子どもや妊婦など“弱者”を襲う危険―どんな影響があるのか
第3章 IH調理器は大丈夫なの?―お母さんのお腹と子どもの頭を直撃
第4章 スマートメーターの恐怖―欧米では反対運動も
第5章 携帯電話基地局周辺の実態―深刻な健康被害と反対運動
第6章 電磁波から身を守る―対策と全国での取り組み


デヴラ・デイヴィス著「携帯電話 隠された真実」プレミア健康選書

身体から離して使用してください――。
取扱説明書にこうした警告を載せるところもある。
携帯電話を使用することによる、脳腫瘍リスク、生殖能力低下、DNAへの悪
影響、脳機能低下を慎重に検証。企業が一部科学者と結託して隠し続けた科学
的な真実を白日の下にさらす1冊。


ザミール・P・シャリタ著「電磁波汚染と健康」

本書は、体を蝕む電磁波汚染をひとつひとつ取り上げ、そのメカニズムを解説するとともに、環境汚染のなかで暮らしていくためのアドバイスを、食事療法からサプリメントの摂取まで、具体的に提案する。増補改訂版では、健康影響に関する最新の研究データと分析を加え、改訂した。

目次

第1部 人体を蝕む化学的・物理的汚染物質(環境汚染物質が病気を増やす?;身近にある環境汚染物質;弱い電磁波から受ける深刻なダメージ;パソコン操作は体に悪い?;電磁波、コンピューター、ストレスの複合影響;増加する「電磁波過敏症」;携帯電話は安全か;レーダー被爆と健康被害;ラジオやテレビ送信機の危険性)
第2部 汚染環境で暮らすためのアドバイス(電磁波と化学物質を避けるには;汚染物質を克服する食事療法;明らかになる健康影響―最近の研究結果とイスラエルでの動き)

 

シャリタ,ザミール・P
医療微生物学者で、電磁場と化学物質の有害性に関するコンサルタント、作家、科学編集者としても活躍。1962年、イスラエルのヘブル大学で農学の理学士号を、1967年テルアビブ大学で医療微生物学の理学修士号を、1976年ワイズマン科学研究所で分子生物学の博士号を取得した。約30年にわたって医療調査、バイオテクノロジー、遺伝子工学を研究。生物学調査イスラエル研究所の常勤スタッフで、ニューヨーク市公衆衛生調査研究所で調査委員、ニュージャージー州のラトガー大学などで非常勤講師を勤めた


加藤やすこ著「電磁波過敏症を治すには」(緑風出版)

本書は、電磁波過敏症の当事者からの体験談も含め、どうすれば治すことができるかを具体的に提案しています。

目次

第1章 過敏症ってどんな病気?(引き金は生活環境の中に;過敏症に関する海外の動向 ほか)
第2章 電磁波による子どもへの影響(電磁波による胎児への影響;電磁波と化学物質―発達障害への影響 ほか)
第3章 八人の過敏症体験(発症して患者会を設立―著者・加藤やすこの経験;電磁波過敏症の一家の闘い―塩田さん家族の経験 ほか)
第4章 症状を改善するために(自分で出来る対策;交通機関の携帯電話電磁波 ほか)


加藤やすこ著「電磁波による健康被害」(緑風出版 )

携帯電話やスマホの普及で無線周波数電磁波が急速に増えている。それに伴い、電磁波による健康被害や過敏症などの患者も増え、その対応が急がれている。本書は、電磁波や基地局をめぐる被害の実態や訴訟の動向、病院や交通機関の対応などを被害者の証言を基に明らかにしている。また、世界の電磁波をめぐる対応や研究者の声を紹介、どうすれば発症者も自由に生きられる社会ができるかを提言している。

目次

第1章 電磁波による健康影響
第2章 声を上げる被害者たち
第3章 病院の電磁波問題
第4章 安全な住環境を求めて
第5章 交通機関の電磁波問題
第6章 スマートメーターのリスク
第7章 電磁波の法的規制と研究
第8章 企業利益より健康と子どもたちの未来を


ジョージ・カーロ&マーティン・シュラム「携帯電話 その電磁波は安全か」(集英社)

始まりは、米国の携帯電話の安全性を確認するための大がかりな業界プロジェクトだった。しかし数年後実験計画を率いた科学者が真摯に到達した結論は…?今や多くの人々の必需品となり、爆発的に普及を続ける未来的な装置だからこそ、もしそこに警告すべき要因が少しでもあるならば、それはフェアに公開されなくてはならないと彼は考えた。科学と政治の駆け引きに学者生命を揺さぶられながら。このほど初めて詳しく明らかになった米国の貴重な新データとアドバイスを、日本では本書で一般に初公開。